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受賞者一覧

令和2年度/第42回受賞者

食品産業部門 <経営革新タイプ①>〔個人〕(2020)
農林水産大臣賞

柿本憲治

所属:日本食品株式会社(代表取締役社長)
所在地:福岡県福岡市
業種:食肉製品、油脂製品製造販売業
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【功績申請の概要】

  • 経営強化のためには、部門連携による効率的な資源活用と、食用油脂以外にも独自性を持った商品開発と販売戦略が不可欠との判断のもと、平成21年から同社の食用馬油などを利用した化粧品開発、製造・販売に取り組んだ。
  • ブランド豚をはじめとした地場の良質の食材を生かした商品を求める地元消費者に応えるとともに、全国の消費者に向けても地元資源を活用した食肉加工品を提供している。
  • 食肉加工業界では先行してHACCPの認証を受け、我が国業界において、衛生管理向上の取組みを先行した。
  • 地球環境への負荷が極めて低い太陽光発電設備の導入を平成25年から進め、環境・経営両面に貢献するエコ活動の推進に努めてきている。平成30年に、省エネルギーの推進に貢献したとして、九州地方電力利用効率化協議会長賞を受賞している。

(業界における指導力、人望)

 性格円満にして温厚篤実、責任感強く、50年以上食肉加工業に携わり、その先見性と豊富な経験を活かして、堅実な中堅上位ハム・ソーセージメーカーの経営者として、社業を通じ国民の食生活の向上に寄与すると同時に畜産業の発展に尽くしている。また団体の役員として、その指導的な立場より食肉加工業界の健全な発展に尽力し、業界からの信望も極めて厚い。

 

(し界の発展への寄与)

○食肉加工品原料の副産物を積極的に活用した多角的経営への取組み

食肉加工品製造事業に長く携わるとともに、平成7年、取締役油脂部長に就任以降、長く油脂関連の事業に携わってきた。氏の地道な営業により主力の食用油脂の販売は堅調に推移し、食肉・食肉加工品部門を含む全体の売上の約3割を占めるまでになった。動物油脂の精製工場としては、同社が九州唯一の精製工場として国内でも重要な拠点となり、国内産が一般的であるラードの販売量は国内でおよそ15%、九州では60~70%のシェアを誇り、動物油脂メーカーとしても重要な地位を占めるに至った。さらに、今後の同社の経営基盤の強化のためには、食用油脂以外にも独自性を持った商品開発と販売戦略が必要であるとし、平成21年から油脂事業部の技術を用いた「馬油」の化粧品としての開発・製造に取り組み、平成22年には馬油化粧品ブランド「BIHADA OIL」として、JR九州グループの商社を通じ販売を開始した。

○地域資源の活用による事業活動の展開と地域への貢献

特に大手メーカーの全国ブランド商品の攻勢等に対抗するためには、地元のお客様が求める新商品の開発と、地場を生かした地産地消の商品作りが、地域の中堅企業として堅実に存在する上での同社の方向性の一つになるとして、「とびうめ豚生姜焼き」、「とびうめ豚ロース味噌漬け」など地元資源を活用した商品開発を進め、販売力の強化に取り組んだ。同社のブランド豚で商標も取得した「とびうめ豚」は地元九州で飼育されており、その品質の良さから西日本地区豚枝肉共進会で8年連続金賞を受賞している。生肉利用から地域資源の開拓に繋がる「とびうめ豚生姜焼き」「とびうめ豚ロース味噌漬け」を開発し、地域ブランド豚の飼養と商品利用の拡大に努めた。

○HACCPの活用と衛生管理への先駆的な取組み 

平成8年に、厚生労働省はHACCPによる製品管理の仕組みを取り入れた、「総合衛生管理製造過程承認制度」を創設した。取締役の立場から製品の安全性が目に見える形で証明できるとともに、今後の食品製造の経営上の観点からも極めて有効な取組みであるとして、制度創設当初からHACCP導入の積極的な有用性を説き、その導入推進に取り組んだ。同社は、平成10年11月には古賀工場で加熱後包装食肉製品(ハム・ソーセージ・ベーコン)の製造に係る総合衛生管理製造過程の承認を取得し、業界の先駆的な取組みとして注目をあつめ、中堅企業のHACCP取組み推進に貢献した。

○環境に配慮したエコ活動への不断の取組み

  同社は、再生可能エネルギー事業に積極的に取り組んでおり、平成7年に風力発電設備を導入し、太陽光発電への取組みを本格化させた平成27年まで、20年にわたり活用した。常に環境問題に対する意識を強く持っており、風力発電に代わる新たな取組みとして、ともに資源の枯渇や化石燃料の消費による有害物質やCO2排出など地球環境への負荷が極めて低い太陽光発電設備を発案し、社長に就任した平成25年から発電装置導入を進め、環境・経営両面に貢献するエコ活動の推進に努めてきている。また、平成27年9月に国連サミットで採択された目標であるSDGs「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の取組みとして、エネルギーの効率化を図るため、平成29年6月1日から令和4年5月31日を計画期間として、工場内における蒸気配管、空調設備、冷凍・冷蔵の各設備の更新、照明器具のLED化、工場設備への高効率モーターならびに高効率トランスの導入を計画し、取組みを進めている。 

○働きやすい労働環境構築への挑戦的な取組み

同社は将来の食品を担っていく子育て世帯が少しでも働きやすい環境となることを願って、平成15年から福岡県が実施している「子育て応援宣言」制度に平成18年から参加してきた。社長就任後、早朝勤務交代制など業界の勤務形態の厳しい特殊性の中で、子育て等でも退職せず安心して働けるよう、子育て中の従業員それぞれの事情に合わせた柔軟な就業が可能となる仕組みが重要であるとの考えに立って、平成29年に、従来の画一的な就業体制にこだわらず様々な就業パターンを取り入れられるよう、就業規則の改定を行った。また、育児休業や介護休業の取得に加え、家庭の都合にあわせ時差出勤や時短での通勤制度を設けると同時に、職場の近くで安心して子供を預けられる保育園を望む従業員の要望に応え、近隣企業が運営する保育園2ヶ所と提携し、安定した就業環境への改善を進めているが、女性従業員だけでなく男性従業員にも同社の育児支援制度は活用されている。

 

(業界の発展への寄与)

○ハム組合九州支部での活動(運営と組織強化の取組み)

それまでの実績と地域社会への貢献が評価され、平成22年4月に日本ハム・ソーセージ工業協同組合九州支部の副支部長に就任した。秋には、地域のみならず全国の情報を収集する為、毎年研修会を開催しているが、導入予定の消費増税及び軽減税率制度の導入にあたっては、氏は副支部長の立場から、導入の1年前に支部組合員向けの説明会を強く提案し、財務省・農水省より担当官を東京から招聘して平成30年10月に説明会・意見交換会を行い、組合員への理解醸成に努めた。このような積極的な行動と能力を認められ、九州地域の支部組合員からの要請を受けて、令和2年5月には支部長に就任した。

 

(地域・地域経済における活動)

○工場見学や工場直販などの取組み

同社は、地域の繋がりを大切にするとともに子供達が地域産業に触れる重要な機会として、近隣の小学校からの希望に応じ工場見学を通じて食育活動の支援を行い、食肉加工製品についての理解の普及に努めてきている。している。 

○地元スポーツ団体等に対する支援

「会社の利益と社会福祉のバランスを取りながら、地域貢献に努めたい」との信条のもと、事業活動を通じ、地域の青少年育成団体や障害者支援施設などの活動も積極的に支援してきている。同社は福岡の地場企業として、平成20年3月に地元スポーツ団体である「アビスパ福岡」のオフィシャルスポンサーとなったが、平成30年3月に「福岡ソフトバンクホークス」とのオフィシャルスポンサー契約を締結し、地元スポーツの発展への貢献とともに、地域の子供達に夢と感動を伝える活動を展開している。