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受賞者一覧

平成29年度/第39回受賞者

食品産業部門<農商工連携推進タイプ>(2017)
農林水産大臣賞

株式会社 三和食品

代表取締役:奥山 茂智
所在地:山形県 最上郡
業種:食料品製造業
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【功績申請の概要】

  • 規格外農産物の受入れと冬期間の働く場を提供することで、地域農業者と強い絆で結ばれ、Win-Winな関係を築き、地域農業の活性化に貢献している。
  • 平成26年に、野菜産地拡大形成を目指す農業者とカット野菜メーカーとの共存共栄モデル事業として、地元農業生産法人(宮城県登米市)と連携し、新たに農業生産法人(株)ベジファクトリーを設立した。モデル事業は順調に推移し、当社の事業拡大と農業者所得の増加を実現している。
  • 平成23年の東日本大震災による津波被災地の農業再生に向けて、熱意を注ぐ農業者と野菜生産に取り組むとともに、規格外品も積極的に受け入れることにより、被災からの復興を支援してきた。現在も取引きが継続している。
  • 山形及び宮城県内の農業者との契約栽培に積極的に取り組んでいる。契約栽培農業者数は278者、26品目に達しており、当社の仕入れの中核を担っている。契約農業者数と栽培面積に変動が少なく、当社購入数量が毎年安定して推移している。今後、拡大が見込める農業者もいる。これは当社事業のサスティナビリティ(継続可能性)を支持する農業者がいかに多いかを表している。

【功績申請の具体的内容】

【農商工連携の推進】

  • 国産農産物の利用、契約栽培の状況
    当社商品の原料はトレーサビリティの観点から、国産原料の使用を最優先としており、徹底した原料管理マニュアルの下で管理されている。すなわち、国産、海外産を問わず、当社社長自らが現地に出かけ、現地生産者から直に栽培方法、使用農薬などを詳しく説明を受け、あるいはデータの開示を求め、畑に植えている現物を五感(視覚、味覚、嗅覚、触覚、聴覚)で確認し、安全安心の視点から品質上問題が無いと判断できたものだけを選んでいる。
    当社が使う原料農産物は多品目にわたるが、主に山形県、宮城県、タマネギなどは北海道などの産地の農家との契約栽培により供給されている。平成28年度の契約栽培実績を見ると、生産者(=契約栽培農家)数は、278者、栽培面積は約2,668ha、当社購入数量(=契約数量)は、約976tとなっている。国産原料仕入総量は、約5,900tであるから、これに対する購入数量割合は約17%である。しかし、当社の場合、このほかに、全国に随意取引農家が無数におり、彼等も契約栽培農家同様、一定量を継続的に出荷してくれている。彼等からの仕入量を加えると、概算で前掲の国産原料仕入総量の約85%くらいになる。当社では上記の随意取引農家の契約栽培化を年次目標を立て、積極的に進める方針である。 
    さらに、仕入原料の歩留りを良くするため、契約先農家と常に交流し、情報交換し合って信頼関係を深め、同時にJAや市町村役場などに働きかけを強めていく考えである。
  • 生産者ヘの技術指導等、農業への支援
    当社では使用するタマネギを調達するため、加工用野菜の生産という位置づけで、平成27年9月に宮城県登米市に「ベジ玉生産グループ組合」という生産組合(組合員4名)を立ち上げた。同組合が栽培に必要とする生産機械(作付け機械、収穫機械、乾燥機)は、当社関連会社の株式会社ベジファクトリーが購入して無償貸与し、組合ではこれらの機械を管理し、希望する栽培農家に無償で貸し出している。
    栽培品目にこだわらず、生産者の集まりがあるという情報が入れば、その都度、許しを得て当社担当者も同席させてもらいコミュニケ―ションを図るようにしている。また毎年秋には、当社社員と生産者が一緒に、当社主催によるバーベキュー大会を行い、今年の反省や今後の計画について、お互いに胸襟を開いた話し合いを行い、生産者との信頼関係を深め時に地域との交流を深めている。東北の農業生産者には、一度酒を酌み交わすと、その後はグッと親近感を持って接してくれる人が多く、色々な場面で助けてもらっている。
  • 国産農産物を利用した新商品開発
    国産原料を使用した新商品は年々需要が高まっていることから、毎年、顧客の要望も含めて当社開発担当者から商品提案を行って商品化に繋げている。これも、農家が自家消費しかできず処分に困っていた規格外品を積極的に買い入れ、当社のノウハウで加工品にする仕組みの発展形である。
    今後も、原料のトレーサビリティのレベルアップをはかり、原産地名を国産から県産、県産から市町村産といった原料原産地の絞り込みも行った形でこれらの農産物も受入れ、消費者の安全安心に寄与していく。特に山形県産を使用した製品には、県産農産物の統一シンボルマークであるペロリンマーク®を製品に貼付し、店頭で目立たせて山形県産を積極的にアピールした商品にしている。
  • 販売促進
    当社ブランドで販売している商品に加え、PB商品を広域展開している全国に販路を持つ企業の商品製造を受託し、販路の拡大を行っている。また、PB商品であっても、当社開発部門のスキルで可能な差別化提案を行い、企業の付加価値と商品ブランドを高めている。
    型止め商品とは、スーパーや卸先が競合先との差別化を狙って、自店にしかない商品(他店には類似品もないので買えない商品)をいう。これらの商品開発においても、当該取引先のメリットを出せる様な形での商品提案を行い、取引先から好評を得ている。 スーパーの惣菜バックヤード用に開発される惣菜キット商品は、当該スーパーのオンリーワン商品として店頭で販売される。その開発にあたっては、当該惣菜キットの季節ごとの売り方や、商品陳列の仕方など消費者に対する販促ノウハウも提案することで、販促担当者の負担を軽減できるような支援をしている。具体的には、「宮城県産春菊と人参のかき揚げ」、「宮城県産雪菜ととろろ昆布のお浸し」、「国産ごぼうの甘辛おつまみ天」といった他のメーカーにはない惣菜キットであれば、原材料の産地、収穫時期(鮮度アピール)などのアピール方法の提案などを行っている。
    当社の関連会社である農業生産法人(株)べジファクトリーでは弁当事業を立ち上げ、地域の道の駅や役場等の公共機関に販売を行っている。この取り組みにより食品ロスの軽減にも繋げられ、また地元の消費者が地元産の惣菜が入った弁当を食べられるという文字通り「地産地消」弁当事業である。なお、この事業の発展形として、地元の高校とのコラボ商品なども計画しており、地域の食育と話題作りに寄与したいと考えている。この事業は、来年、山形県大蔵村に新設する加工工場(平成30年4月稼働予定)の事業としても取り入れる考えであり、地域と一体となって進めていく。

【地域農業との連携、地域活動等】

  • 地域社会との連携
    本社工場では、毎年、地元の小学生を招いて、実作業を行っている工場内に入ってもらい、商品の加工工程や、衛生管理の方法について体験してもらうと同時に、当社で製造している商品製造体験をしてもらい、食育と校外教育に貢献している。また、これとは別に、地元の中学校や高校からのインターンシップの受入れも行い、生徒の自己成長の場として活用していただいている。
    平成23年3月の東日本大震災に際しては、発災後いち早く、惣菜メーカーとしてできる支援として、 被災地への食料提供を行った。仙台工場従業員の親族にも犠牲者が出た経緯から、現在まで、被災地の復興支援には特別の思い入れを持って臨んでいる。特に、津波で土を流され農業ができないと思われた地区で、自ら農業の再興に立ち上がった若い農業者を支援している。それは、大きさや形が市場に出せない規格外品でも受け入れられる当社ができる支援の形である。また、被災地の住民が経営する食堂やレストランからの要請で、メニュー作りに当社のノウハウを提供することもある。当社としては、被災地が真の意味で復興するまで、こうした支援を続け、地域との交流を深め、応援していきたいと考えている。
  • 地域の農協、漁協、地方食品産業協議会等との協力状況
    生産者の農産物出荷量を増やし、農業収入を増やすため、農協を通じて地域の生産組合などとも連携をとり、今まで廃棄していた規格外品の積極的な出荷を勧めている。以下に主な事例を示す。

    JA登米地区菅内で規格外の茄子や曲がり胡瓜が多数出て困っているため、それらを原料に、惣菜商品を開発・地産商品として、量販店の惣菜コーナーへ販売を行っている。生産者も高齢化が進み、規格品を出荷するにも思うように出荷出来なくなっている現状で、今後も規格外品の受け入れを積極的に行っていく。

    今期からJA山形もがみで取り扱っているトマト、ミニトマトの規格外品の購入とそれらの原料を使用した商品開発・販売に取り組んでいる。これにより、農協や生産農家の方で廃棄する際に支払う産業廃棄物料金を削減でき、かつ、新たな農業収入もできることになり、生産者の方の生産意欲の向上になる。同時に、地元の農産物を使用した商品を開発する事で、生産者や関連機関等のモチベーション向上と、地域農業の更なる活性化が見込まれる。

    耕作放棄地の拡大は、当社の事業継続性にも影響しかねない重要課題である。そこで、山形県や宮城県の市町村役場、JAなどを廻って、地域の情報を収集しながら、耕作放棄地の有効活用方策としての当社の惣菜原料の栽培を提案している。その成果例が、前掲のJAもがみ管内の大蔵村との加工工場立地協定締結である。この取り組みでは、同村内に約3,000㎡の敷地に床面積約820㎡の加工場を新設し、同村特産のミニトマトの加工品を生産する予定である。この地域では2年後を目標に、新たな取り組みとして、ミニトマト栽培に、地元JAと連携したGAPの導入も検討している。
  • 地域の雇用先としての貢献
    当社社員の出身地は、約95%以上が、工場所在地のある山形県か宮城県である。当社の関連会社(株)ベジファクトリー(宮城県登米市)は、約40人の社員全員が登米市民である。当社は、こうした地元採用方針を今後も継続していく考えである。例えば、前掲の山形県大蔵村に新設する加工工場では、平成30年4月の本稼働時には約20人の地元雇用を予定している。

    当社正社員の定年は65歳であるが、健康で働ければ、本人の希望により68歳まで延長でき、現在、68歳の社員が1名いる。

    当社の場合、全社員の約80%は女性社員である。開発する食品の味、食感、見た目などの評価に女性のセンスや能力が欠かせないことによる。中でも優秀な人材については管理職に登用し、能力を発揮してもらっている。現在、課長職に2名の女性社員が就いている。また、小さい子供がいる女性でも働きやすいように、勤務時間については個人ごとの要望に沿った形での勤務時間としている。さらに、産休復帰後も以前のポジションが保障されており、子供の学校用事などで休まざるを得ない場合も、他の社員がその仕事を一時的に代わってくれるルールが出来上がっている。こうした取り組みが評価され、平成29年3月に、山形県から山形いきいき子育て応援企業として優秀(ダイヤモンド)企業に認定され、また、平成29年8月に宮城県から「女性のチカラを活かす企業」として認証された。

【原料原産地表示の取組等】

  • 自社商品で原料原産地表示が義務付けられているものは、法律に基づいて適切に産地表示を行っている。又、特に特定の産地のものを使用している商品については、トレーサビリティを含めて実施しており、国産・県産原料を使用した商品であることを商品に記載してアピールしている。 山形県産原料を使用した小売り商品は商品ごとにペロリンマーク使用許可の申請及び、製品へ表示を行い地元のスーパー等での販売を通して県産原料使用のアピールを行っている。