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受賞者一覧

平成29年度/第39回受賞者

食品産業部門<経営革新タイプ①>(2017)
農林水産大臣賞

マルヨ食品株式会社

代表取締役社長:中村 善則
所在地:兵庫県 美方郡
業種:水産系食品製造業
> 公式ホームページ

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【功績申請の概要】

  • 【経営近代化・合理化、生産性の改善向上等】
    当社は、兵庫県の北部「香住漁港」近くに会社を構え、兵庫県の日本海側で水揚げされる水産物を中心に食品加工を行っている食品メーカーである。主な商品は、「かにみそ」、「のり佃煮」、「ほたるいか商品」であり、今般の申請にあたっては、「ほたるいか商品」の製造を通じての水産業界の発展に貢献した功績によるものである。
  • 平成10年に当社が他社に先駆けて「ほたるいか醤油漬け」の開発、販売に動き出した頃、世間では「ほたるいか」をシンプルにボイルしたものを出荷する「ボイル製品」が主流であり、特に現在のような醤油漬けや佃煮といった加工品は希少であった。
  • 「ほたるいか」が、醤油漬けなどの加工原料としても定着し始めると、佃煮や素干といった加工品の種類や加工業者が増加し、主流であったボイル製品以外の使用量も増加した。加工品の原料として使用するために毎春水揚げされるほたるいかを一年分確保することが必要となったことも買付ニーズが喚起された要因であり、豊漁となった時期でも大きく値崩れすることはなくなった。結果として、一年魚であり安定した漁獲量がある「ほたるいか」に着目し製品開発を行った弊社が、他社や漁業者等関連産業の向上、発展に貢献する形となった。
  • 平成19年「ほたるいか醤油漬け」を始めとした『チルド商品(生珍味)』の専用工場(以下「チルド工場」という。)を他社に先駆け新設し、衛生管理および品質向上に取り組むとともに、拡販に向けた生産体制の構築を図った。
  • 商品「ほたるいかの醤油漬け」は、非加熱製造ながら保存料を使用せずに60日の賞味期限を実現した。従来「ほたるいか醤油漬け」生珍味商品は2週間程度であったものが、味と品質を保持したまま賞味期限を60日まで延長することに成功したことが評価され、平成18年第55回全国水産加工たべもの展「大阪消費者大賞」を受賞した。また、平成20年3月には、『但馬特産水産物の付加価値を上げていくことに意義がある。同社の取組によりホタルイカが松葉ガニと並び、山陰海岸を代表する名産品として成長することが期待される。』として、「キラリと世界に輝く技術」部門で但馬産業大賞を受賞した。

【功績申請の具体的内容】

【経営近代化・合理化、生産性の改善向上等】

  • 新たな事業活動の展開による経営の向上
    当社は、現在「ほたるいか商品」に注力し、商品開発、製造、拡販を通じて、「兵庫県産ほたるいか」のPRを行っている。「ほたるいか」は、年明けから春頃に水揚げされる一年魚であり、例年安定した漁獲量があることに着目し、中核事業に据えた。
    近年、漁獲量の減少による仕入量の減少や仕入価格の大幅な高騰により、水産加工業界では業績の悪化や倒産などの影響を受けている。対して「ほたるいか」は、近年漁獲量は年々増加となっても『浜値(漁業者からすれば売価)』も安定しており、高値で取引されるケースも増加している。
    このように「ほたるいか」は、今後も安定した漁獲量が期待できるとともに、その加工品や原料が冷凍保存できることから一年を通じて商品を安定供給できる強みがある。また、水揚げ時期となる春頃は「旬のボイル製品」が主軸となるものの、加工品は一年を通じて、醤油漬、佃煮、素干などのレパートリーでかつ原料の大きさに左右されず使用できることも強みである。
    商品開発において、その素材の「旨み」を生かすことをモットーとしている。「兵庫県産のほたるいか」は、ほたるいかの成体と比較すると小ぶりの印象だが、加工品の原料として、「一口サイズであること」、「背骨が小さいこと」のメリットがあげられる。まず、「一口サイズ」であることによって加工品は食べやすい大きさに仕上がり、わたも口の中にしつこく風味が残ることがない。次に「背骨が小さい」ことによって口に入れても気になりにくく、食べた時の食感とわたの旨味を一層味わえる。言い換えれば、地の利を生かした産地特有の加工品製造を行っているわけである。
  • 設備導入、工程見直し等による生産性の向上
    適宜、生産機械の一部に自動機を導入することによって、生産性向上と品質管理強化を図っている。平成19年に建設したチルド工場(「ほたるいか醤油漬け」等の塩辛部門)では、従来機械では充填が困難であり、手作業で計量、充填していた「ほたるいか醤油漬け」を「カップスケール(自動計量充填機)」、「オートチェッカー(自動計量機)」を用いて自動化に成功した。
    ほたるいかの「異物除去機」を独自に考案、開発し、水揚げ時に混入する「テグス」、「小魚」、「エビ」などの異物を効率的に除去することに成功した。平成25年には、HACCP対応の境工場(「紅ずわいがに」、「松葉がに」、「ほたるいか」等鮮魚出荷部門)を建設した。鮮魚出荷工場においては、原料などの搬入口と出荷用口が共通であるのが一般的である。対して、弊社境工場は、搬入口から搬入した原料等を「汚染室」にて開梱処理し、ボイル等加工したものを出荷用口から出荷するという設計であり、衛生面や作業効率面で他社との差別化を図った。
    現在、プロトン凍結庫の導入を予定して、プロトン凍結技術を活用した鮮度維持による加工品の鮮度向上や、凍結時間の短縮による生産性の向上、省エネ化を進めている。
  • 新製品開発による市場開発
    「ほたるいか」など前浜である「香住港」で水揚げされる水産資源を原料とした新商品開発にこだわり、新たな顧客層へのニーズ喚起と販路拡大を目的とした新商品開発に着手している。平成28年に開発、販売した「ほたるいか醤油漬プレミアム160g」は、醤油の風味を効かせた昔ながらの醤油漬ではなく、「だしの風味」を効かせたあっさりとした味付とし、従来の醤油辛いイメージを刷新することで、今まで敬遠されていた顧客の獲得を目指した。また、ほたるいかが水揚げされる「春季」に生原料から製造できるポイントを生かし、製造時期を限定した「プレミアム品」として販売した。
    平成28年には「ほたるいか商品」、「かにみそ」、「のり佃煮」が、市場や仲卸を経て量販店で販売される加工品であるのに対し、飲食店で加工、調理を必要とする商品「業務用鮮魚」の開発、販売も行った。これは直接飲食店に新鮮な「鮮魚」を届けることができれば、新たな販路の開拓や拡販が可能だと考えて開発した。「業務用鮮魚」として、最初に開発、販売したのが、全国規模でニーズが高まり、引き合いがあった「生のどぐろ20匹」と「生はたはた20匹」である。
  • 販売促進
    販売促進平成18年に通販業務を主体としたグループ企業「(株)マルヨダイレクト」を設立し、消費者や飲食店へ直接お届けする形での販路開拓を始めた。特に、関西圏では香住港のみ水揚げされる「紅ずわいがに(「香住ガニ」として当地ブランド化)」を販売の主軸とした。
    なお、居酒屋など飲食店向けの販路拡大については、「居酒屋ジャパン」等大型展示会への積極的参加や「業務用鮮魚」といった飲食店向けの商品を開発することで、新たな顧客の獲得に注力している。また、大型展示会への出展の他、金融機関との連携によるビジネスマッチングを活用し、新たな顧客の獲得、販路拡大、市場調査も行い、HPを刷新し企業イメージの周知や顧客ニーズの喚起を図っている。
    出展実績:平成28年8月ジャパンインターナショナルシーフードショー(東京ビッグサイト)
    平成29年1月居酒屋ジャパン(東京ビッグサイト) 他
  • 従業員の資質の向上のための取組み
    保健所や食品衛生協会が開催する衛生研修に随時従業員を参加させ、知識取得を図るとともに、身に付けた知識を業務へどうフィードバックするかなど、研修で学んだ情報を現場で活かすとにも取り組んでいる。また、従業員の階層に合わせた社外研修やセミナーへの参加、自己啓発によって社員の資質向上を図っている。社外研修実績:平成28年度17の研修会およびセミナーに18名が参加
  • 独自の製造方法及び技術研究開発の推進・充実
    兵庫県山陰で水揚げされる原料を用いた、素材本来の「旨味」を活かす新商品開発を推進している。これらは、他社にないチルド工場や境工場など他社にない設備によって提供可能となった。さらに平成29年10月下旬に導入予定のプロトン凍結機により、買付した鮮魚の鮮度を維持したまま凍結することが可能となるため、冷凍技術を活用した新たな商品開発はもちろん、従来製品についても原料段階から鮮度維持が可能となることによって現状よりも高品質な商品の製造も図ることが可能となる。
  • この他の経営改善措置等
    平成28年には、工場屋根を活用した太陽光発電設備の導入、社内および工場内の照明器具をLED照明器具に交換し、光熱費の節減や環境に配慮した経営にも注力した。平成29年10月には、女性専用の休憩室兼更衣室が完成し、設備面から女性従業員の福利厚生面の充実を図った。女性工員の就業状況については、保育園児や幼稚園児といった小さな子をもつ子育て世代の就業も増えてきており、登園時間帯や迎えの時間帯を考慮したパートタイマーの就業にも対応している。

【原料原産地表示の取組】

原産地、製造方法、使用添加物など、買付けから仕上げに至るまでの一貫した管理が行えることによりトレーサビリティを確立している。また、取扱商品が多岐にわたり輸入原料を使用した商品もあることから、関連法令を順守し、顧客の誤認防止等管理を徹底している。

 

【その他】

  • 「かにみそ」の製造販売
    創業と同時に製造した「かにみそ」は、今でこそ珍味として認知されているが、昭和30年当時は、漁師の酒の肴にすぎなかった。昭和48年にウィークポイントであった保存の悪さを缶詰化することで克服し、料理材料としての価値を高め、販路拡大等販売に拍車をかけたのが二代目社長・中村満雄であった。現在の主力商品である「かにの身入りかにみそ60g」が開発、販売されたのが平成18年であり、直近決算でも総売上高の約10%を占めているとともに、国内シェアについてもトップとなる。
    また、「かにの身入りかにみそ60g」は、モンドセレクション銀賞を5回受賞しており、世界的にも品質を評価されている。
  • 食味の良い“のり佃煮”の製造販売
    主力商品の一端を担っている「のり佃煮」は、昭和56年爆発的な販売によって、全国にのり佃煮ブームを巻き起こした。当時は、原料の海苔をミキサーにかけて粉々にし、原形がないほど煮詰めていたものが主流であったが、二代目社長・中村満雄は昭和56年に「海苔の原形が残る食味のよい佃煮」を商品化した。この原料の風味を生かすため葉体を残し炊き込みを軽くする「浅炊き技法」によるのり佃煮の出現により、全国に「岩ノリ」を名乗る製品が輩出、メーカー数も30社に及ぶのり佃煮ブームとなった。また、モンドセレクションでは、「荒磯のり180g」は、銀賞1回、金賞3回、「荒磯のり230g」は、金賞3回を受賞し、品質を評価されている。