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受賞者一覧

令和5年度/第45回受賞者

食品産業部門<経営革新タイプ>(2023)
農林水産大臣賞

濵田酒造株式会社

代表取締役社長:濵田雄一郎
所在地:鹿児島県いちき串木野市
業種:焼酎製造業
> 公式ホームページ

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【功績申請の概要】

  • 本格焼酎を真の國酒(こくしゅ)へ、更には世界に冠たる酒へ」を事業テーマに掲げ、国際規格認証取得の取組を通して業務を見直し、品質管理体制を強化。現場へのシステムの落とし込みのため、独自の「濵田マネジメントシステム」を構築し、PDCAを循環させている。
  • 強固な生産体制を構築することで焼酎業界に一石を投じる新商品「だいやめ~DAIYAME~」の開発が可能となり、国内外で高い評価を受けている。「だいやめ」とは、「晩酌して疲れを癒す」という鹿児島の方言で、鹿児島県の晩酌文化を発信し、芋焼酎のイメージを覆す「未踏の香り」を実現し、炭酸割という新たな飲み方の浸透を通して焼酎ファンの増加に貢献した。

●功績申請の具体的内容

(経営近代化・合理化、生産性の改善向上等)

○新たな事業活動の展開による経営の向上

・当社は1868年(明治元年)に鹿児島県いちき串木野市に蔵を構え、現在は伝兵衛蔵・傳藏院蔵(でんそういんぐら)・金山蔵の3蔵を有し、「伝統・革新・継承」の理念を体現するため、事業テーマを「本格焼酎を真の國酒へ、更には世界に冠たる酒へ」と定めた。1998年に最新設備を導入した「傳藏院蔵」の建設準備を始める際に、品質管理体制の強化として、ISO 9001とISO14001に取り組み、2006年に認証を取得。さらに、FSSC 22000を2018年に認証を取得した。これにより、対外的な評価が高まり、社内トップから従業員一人一人までプロ意識をもって業務にあたっている。

・国際規格導入の成果のひとつに「だいやめ~DAIYAME~」がある。独自製法による「ライチの香り」と「フルーティーな味わい」といった魅力を生み出し、お客様に安心・安全に届けられる技術と仕組が整っている。「だいやめ~DAIYAME~」は国際的な酒類の三大コンペ「International Wine & Spirit Competition:IWSC 2019 SHOCHU部門」で最高賞を受賞した。これをきっかけに「DAIYAME 40」(アルコール度数40度)を開発し、輸出専用商品として海外マーケットに挑戦している。

○設備導入、工程見直し等による生産性の向上

・最新鋭のオートメーション設備を配した工場で製造工程のノウハウをデータ化し、品質安定と効率的生産を実現。原料の芋を洗って切る・選別する作業を機械化し、蒸留も自動化した。2016年に芋を切る・選別する作業を機械化したことで、90名の臨時採用職員を半分以下にできた。蒸留は1名・8時間体制であったが、自動化で24時間稼働となり製造量増大に繋がっている。内部管理体制を可視化した「濵田マネジメントシステム」を構築し、品質管理、環境管理、食品安全全般について、現場に即したシステムにするためにPDCAを徹底している。

・企業哲学「濵田フィロソフィ」により、ステークホルダー(株主・顧客・従業員・地域社会等)の立場を踏まえた上で、透明、公正かつ迅速な意思決定を行う仕組みを整備し、「健全な経営の実現を通して持続的成長」「中長期的な企業価値の向上」の実現に取り組んでいる。

○市場開拓、販売拡大の取組み

・焼酎に馴染みのない人達にも美味しいと思ってもらえるものを造り、焼酎文化を後世に継承していくため、部署横断の新商品開発プロジェクトを立ち上げ、これまでにない香りを訴求ポイントとした商品作りに取り組み、創業150周年(2018年)に「ライチのような香り」で先駆的な焼酎「だいやめ~DAIYAME~」を発表した。幅広い飲み方で気軽に味わえる本格焼酎を通じて、「鹿児島の生活に根付く文化を世代や性別、国籍を超えて多くの人々に伝えていきたい」との思いを込めている。

・輸出プロモーター(専門家)の支援を活用し、海外BAR市場向けの新たな高濃度本格焼酎の開発に取り組み、2021年7月、輸出専用の「DAIYAME 40」の輸出を開始。伝統と高度な蒸留技術など、海外市場に訴求するストーリーを構築し、高付加価値商品としてアピールした。既存の商流や海外見本市への出展を通じて、販売先の開拓に取り組み、欧米及びアジア各国への輸出を拡大した。

・2018年の「だいやめ~DAIYAME~」発売当時はあまり馴染みのなかった焼酎の炭酸割りを提案し、全国で試飲会を実施。また、オンラインイベントを通じて「家飲みの愉しみ方」をひろげ、各種イベントでの生の声を紹介する特設ページやSNSのハッシュタグキャンペーン(♯マイだいやめカクテルキャンペーン)等の取組で幅広い方々から支持を得ている。ブランディング戦略として、黒をイメージカラーとしてスタイリッシュなボトルやパッケージデザインで、小売店・量販店への専用POPの提供を行っている。

○独自の製造方法及び技術研究開発

・本場鹿児島県で150年培ってきた伝統の技と味を生かしながら、現代の生活環境の変化や顧客ニーズに即した商品作りに挑戦し、「香り系焼酎」の代表格となる「だいやめ~DAIYAME~」を10年かけて商品化。その最大の特長は、アロマリッチな成分を増幅させたさつまいも「香熟芋」を黒麹で仕込み、発酵熟成させたもろみを40℃~50℃で1回減圧蒸留することで、柑橘系の香りや発酵由来のフルーティーな香りをバランスよく生成させる、当社独自の技術「香熟製法」によるものである。

○労働環境改善、福利厚生の取組

・健康で安心して働ける職場環境づくりのため、健康診断の徹底、女性の検診項目の充実、インフルエンザ予防接種の助成、運動習慣作りのサポートを行っている。また、コロナ禍で在宅ワーク環境を整備し、鹿児島市内にサテライトオフィスを設けた(現在も稼働)。こうした取組により、4年連続で「健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)」の認定を受けている。

・2022年5月に「女性活躍推進宣言」を発表し、ダイバーシティ経営、女性活躍も含めた多様な人材活用など、ワークライフバランスのとれた職場づくりを目指している。また、製造工程の機械化による従業員の残業時間削減や、従業員の所得面にも配慮し、処遇の改善を図っている。

○従業員の資質の向上のための取組み

・社内資格制度「杜氏」「利き酒師」「検査士」「優良荷役」を取得した職員を表彰することで、従業員の資質向上、モチベーションアップを図っている。また、外部の資格取得にかかる受験料を補助し、従業員の自己研鑽を推進している。

・毎月1回、勉強会を設け、官能評価の精度を高めるためのテイスティング(2010年開始)等を行っている。また、教育講座を利用し、業務に合わせて自由に受講できるオンデマンド配信講座を行っている。自分の担当領域以外の講座も受けれるので、周りへの理解が進み、会社全体で能動的に情報共有して仕事が進むようになった。

外部との連携

○社外との連携による経営改善措置等

・2023年2月、鹿児島県酒造組合(会長は当社社長)主催で、いちき串木野市と日置市の6つの焼酎蔵を周遊しながら、焼酎蔵と地域をまるごと体感する県内初の「焼酎ツーリズム」が開催され、当社も若手職員を中心に「焼酎ツーリズム実行委員会」に加わり、焼酎の魅力発信や地産地消の訴求、焼酎蔵・旅行者・地域が交わり混ざり合う場作りに貢献した。当社は2018年に経済産業省「地域未来牽引企業」に選定されており、いちき串木野市が掲げる「食のまちづくり」に貢献。

・いちき串木野市の「本格焼酎による乾杯を推進する条例」制定10周年を記念し、『未来に乾杯! 十代からの本格焼酎体験』がスタートし、第1回目「いちき串木野市と本格焼酎についての講座」を当社で実施した。また、高校生の職場体験、地域の保育園による「さつまいもの苗植え・芋堀り体験」など、焼酎文化に関心を持つきっかけづくりを行っている。就職や進学で地元を離れる人も多いので、若いうちから地域の文化・産業に触れ、いちき串木野市に愛着を持ってもらいたいという思いである。