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受賞者一覧

令和3年度/第43回受賞者

食品産業部門<農商工連携推進タイプ>(2021)
農林水産省大臣官房長賞

株式会社新倉

代表取締役:斎藤英之
所在地:千葉県鴨川市
業種:米穀の精米および卸・小売・米加工品製造業
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【功績申請の概要】

  • 農業者の高齢化・後継者不足による仕入れ減、米食離れの加速化、コロナ禍等による米穀事業者の減少傾向の中でも、直接仕入れによる農業生産者への継続的かつ長期的な需要の維持拡大に努めている。
  • 千葉県産米の販売に努めることのみならず、さらなる商品付加を求め、明治天皇大嘗祭に使用された地域ブランド米「長狭米」(ながさまい)の加工品への活用(純米ばうむ等)や、くず米を米粉に変え、地域資源などを活用し組み合わせて再利用商品(ぬれ揚げ煎)とし、販路・卸先を多角化した。
  • 既存事業である米穀の精米・卸・小売事業の土台(サプライチェーン)を継続し、さらに活かして、米の需要維持のために新たな儲かる仕組み作りとして、米加工品事業にトランスフォーメーションしている。

(農商工連携の推進)

〇国産農林水産物の利用や契約栽培の推進

・1920年に米穀製造・卸・小売業者として、農業生産者の所得向上を掲げ、千葉県産米に拘り、地域産米の加工品への積極利用と地域資源推進を主として仕入れ・製造・販売を行っている。年々米の国内消費量が減りつつある中で、生産者の所得向上と需要維持のため直接仕入れに力を入れている。

・2017年からスタートした米加工品事業では、千葉県産業振興センターの力を借り、農林事業者と連携して開発した「ぬれ揚げ煎」は長年の課題であったくず米の再利用も含まれる。また、2019年には地域ブランド米「長狭米」を米粉にし、低アレルゲン、グルテンフリーのバウムクーヘン「純米ばうむ」を開発した。

・千葉県産原料の注文先は、鶏卵は館山市の㈲宮本養鶏、さつまいもは南房総市の㈱たんぽぽ農園、カツオは鴨川市の㈲永井商店、ヒジキは㈱斎武商店、純米酒は鴨川市の亀田酒造㈱、くず米の製粉は市原市の㈱こなや本舗、煎餅の加工は茂原市の㈱餅工房と、全てを千葉県内の会社から行い、地域製造者の所得増加を安定的に図っており、コロナ禍でありながら県産原料の使用量は増加している。

 

〇生産者ヘの技術指導等、農林水産業への支援

・生産農業者が年々高齢化し、仕入れが減少する中で、生産者宅一軒一軒への電話、手紙、検査袋のお届け、米の引取りを直接行うことで生産者の負担を減らし、生産者の所得を考慮した買取価格設定で農業者を支援している。

・2005年に農産物検査法に基づく地域登録検査機関として登録した。検査結果の農業者へのフィードバックや注意喚起をすることで、翌年の収穫時の配慮、品質の向上、上位等級比率の向上などに結び付けている。

・2013年に鴨川市の生産者と協力し、千葉県の産地品種銘柄として早生種ミルキーサマーの新規設定に繋げ、2017年には㈱ちから米穀の代表取締役の山下力氏と早生品種「五百川」を普及させた。

・2018年に当社と生産農業者、種苗業者で構成する「五百川研究会」を組織し、植え付けのレクチャー、報告会などを定期的に行い、農家の所得安定等について意見交換を進めている。

 

〇国産農林水産物を利用した新商品開発

・2017年に新規事業として立ち上げた米加工品事業で開発した「ぬれ揚げ煎」は、くず米を米粉に変えて再利用することで食品ロスを減らし、所得拡大を狙った商品である。現在は廃棄ゼロとなっている。

・2019年に開発した「純米ばうむ」はグルテンフリー・バウムクーヘンであり、米粉は明治天皇即位式(大嘗祭)献上米の「長狭米」を使用し、鶏卵や純米酒も千葉県産をふんだんに使用した点などが評価され、千葉県主催「食のちばの逸品を発掘2020」の直売所部門で金賞、「優良ふるさと食品中央コンクール2020」の国産農林産品利用部門で一般財団法人食品産業センター会長賞を受賞した、

 

〇販売方式や販売ルートの工夫等による販売促進

・鴨川市は観光地域でもあり、当社は業務用米をホテル・旅館・民宿など約33施設、お土産商品をホテル売店、道の駅など20施設へ納めている。また、医療施設への業務用米の販売も推進し、現在では病院、介護施設や学校食堂、スーパーなど27施設へ納めている。

・ふるさと納税では市内で1番の品数(41品)を誇っている。2019年には市内有志事業者6社による若だんな定期便などとコラボし、本年は国の「国産農林水産物等販路多様化緊急対策事業費補助金」などの採択を受け、15日間で1,450万円を売り上げ、地域にも貢献している。

・2015年から「世界へ日本の食卓を運ぶ」をキャッチコピーに、「香港FOOD EXPO 2015」、「シンガポールOishii Japan 2015」などへの参加、ドバイ、マレーシアでの試食会、国内でもJETRO輸出商談会、「FOODEX JAPAN 2016国際食品・飲料展」に参加した。米の輸出に成功したが、米のみで展示会に参加することには限界もあり、現在は国内渡しの取引のみとしている。2019年には米菓子20,000袋をアメリカに輸出した。

 

(地域農林水産業との連携、地域活動等)

〇地域社会との連携状況

・当社は、2014年から品質保証体制の徹底・充実、品質意識の向上による社会的信頼や顧客満足の向上のために「ISO 9001」を導入し、生産者との年1回のアンケートの実施、グラフ化(可視化)、作業の標準表の作成など、より良い改善を繰り返すことに徹している。

・千葉県米穀小売商業組合の理事も務めた経験があり、お米マイスターや米・食味鑑定士などの資格を取得。(一財)日本国際協力センターと鴨川市の企画する訪日外国人(シンガポール26名、ベトナム15名)農業・水産業プログラムで講演するなど、日本古来の優れた食文化、お米文化等の啓蒙活動を行っている。

・貿易事業に関しては、「千葉ブランド農水産物・食品輸出協議会」、「千葉県庁流通販売課販売・輸出促進室」、「公益財団法人千葉県産業振興センター」と繋がりを持って経済活動を行っている。

 

〇地域の農協、漁協、地方食品産業協議会等との協力状況

・鴨川のブランド米「長狭米」は、生産者との直接契約のほか、毎年安房農協を通じて仕入れ契約を結び、生産者の営農を支援することで持続可能な水田農業に貢献をしている。また、農業者との婚活イベントをJA安房と地域NPO団体と共催する活動も行っている。

・ちばの「食」産業連絡協議会及び千葉県主催のコンテスト「食のちばの逸品を発掘2020」の直売所部門で金賞を受賞し、ちばの「食」産業連絡協議会及び千葉県の推薦を経て「優良ふるさと食品中央コンクール2020」の国産農林産品利用部門で一般財団法人食品産業センター会長賞を受賞した。

 

〇地域の雇用先としての貢献

・2016年に策定された鴨川市の「鴨川市過疎地域自立促進計画」で旧天津小湊町は過疎地域とされたが、当社の従業員の73%はその地域からの雇用であり、人口流出減に貢献している。全従業員の市内雇用91%、県内雇用は100%であり、年齢層も23歳~74歳と幅広い。

 

(食品表示法への対応)

〇米トレーサビリティ法と食品表示法の順守

・当社は農産物地域登録機関であり、米トレーサビリティ法における生産者との取引等の記録の作成・保存はもちろん、一般消費者のみならず事業者間での産地情報伝達を義務として遵守している。また、食品表示法で原料原産地情報表示の義務がある玄米・精米・もちは、これまでも表示している。米菓子製造においても、開発当初から栄養成分表示(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量)、表示レイアウトの改善(原材料と添加物を区分)、アレルギー表示の方法(一括表示)に対応している。