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受賞者一覧

令和2年度/第42回受賞者

食品産業部門<農商工連携推進タイプ>(2020)
農林水産大臣賞

株式会社マルヤナギ小倉屋

代表取締役社長: 柳本一郎
所在地:兵庫県神戸市
業種:豆、昆布、もち麦などの製造販売
> 公式ホームページ

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【功績申請の概要】

  • 日本初のレトルト煮豆の開発に成功するとともに、日本初「蒸し大豆」を開発し、市場規模を拡大した。また、日本の農業が抱える様々な課題に対応するため、食品メーカーとして生産農家に対して奨励金を出す等の施策を講じてきた。
  • 日本人の食物繊維摂取不足を解消するために、食物繊維が豊富な“蒸しもち麦”を開発し、国内農業の活性化を目指している。基幹工場立地市にあるJAみのりと連携を深め、原料の地元での確保に努めるとともに、もち麦の健康価値を伝える啓蒙活動に取り組み、地域農業の振興に寄与している。
  • 「伝統食材のすばらしさを次の世代へ」を企業ミッションとして掲げ、原料のもち麦の生産地である加東市の農業振興に寄与するだけでなく、加東市及び国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所をも交えて、地域住民の健康増進対策を推進している。

(農商工連携の推進)

〇「もっと大豆を食べてほしい」から始まった食品メーカーとしての視野の大変革

・株式会社マルヤナギ小倉屋(以下、弊社)は、1848年創業の大阪の老舗昆布商「小倉屋」の暖簾分けとして、1951年に神戸で創業した。1976年に、海の昆布に加えて畑の大豆の取り扱いを始め、日本初の甘くなく日持ちのする煮豆・レトルト煮豆の開発に成功した。その後レトルト煮豆は500億円規模の市場にまで成長している。

・2004年に大豆の美味しさと栄養価値を併せ持ち食の洋風化にも対応する「蒸し大豆」を日本初で開発した。弊社も当初は「もっと美味しい水煮大豆」の開発を進めていたが、「画期的な独自蒸し技術」を開発し、今までの水煮大豆と完全に差別化された「蒸し大豆」の開発に成功した。「もっと大豆を食べてほしい」という強い思いの下、店頭での地道な

試食販売等を繰り返し、蒸し大豆はその後16年間の育成活動によって、現在70億円の市場規模まで成長している。

・我々食品メーカーとして、蒸し大豆に使用する美味しい北海道産の大豆を確保する取組みを通じて、北海道の農家との交流が深まり、農業が抱える課題や安全安心・環境問題についての理解が深まった。

【取り組み①】蒸し大豆に適した美味しい大豆の品種が農家にとっては作りにくく衰退品種になっていることを知り、おいしい大豆の契約栽培を維持、拡大するために、奨励金(マルヤナ ギ出資)を出すなどの施策を講じた。

【取り組み②】消費者により安全安心なものを、また環境にやさしい農業を目指して、減農薬・減化学肥料の特別

栽培を契約栽培で奨励している。

【取り組み③】日本の農業では難しい有機無農薬栽培の大豆も、力のある農業者にお願いして 契約栽培を進め

ている。

○蒸し大豆から“蒸しもち麦”へ、そして地産地消による地域活性化へ

・2015年に蒸し大豆の技術を生かして水溶性食物繊維が豊富なもち麦を使って「蒸しもち麦」を開発した。ただ、当時は、もち麦の国産原料は極めて少なく、市場のもち麦のほとんどが海外産原料だった。食物繊維の摂取不足が生活習慣病増加の一因となっており、現代日本人に必要な食材であるもち麦の国産化を実現したいという強い思いの下、活動を開始した。

【取り組み④】もち麦栽培についての研究調査を重ねた上で、2017年年初に国立研究開発法人農研機構からキラリモチの種を90㌔いただき、それを北海道の旧知の農家で栽培して増やしていただいた。

【取り組み⑤】2017年初めより、もち麦を栽培してくれる農家を探していたところ、北海道の農家だけでなく、弊社工場が所在している兵庫県加東市のJAみのり様が栽培してくれることになった。2017年11月試験栽培開始、2018年30haに拡大、2019年96haへと順調に栽培面積を拡大し、2020年5月には173トン(乾燥調製後)の収穫に達した。

【取り組み⑥】弊社が加東市に進出してから50周年にあたる2019年7月、JAみのりとのもち麦の栽培拡大をベースに、加東市と弊社は、地域活性化・市民の健康増進・農業振興等に関する連携協定を締結。

【取り組み⑦】地元農家と共に地産地消でのもち麦栽培を進めつつ、「加東市を日本一健康な町にしよう」というスローガンの下に、市民を対象に食育健康セミナーを開催する等広く啓蒙活動を進めてからだに良いもち麦食の普及を目指すなど、多彩な活動を展開している。

○基幹工場の地元 「加東市を日本一健康な町にしたい」

「伝統食材のすばらしさを次の世代へ」を企業ミッションとして掲げ、具体的に始動し始めた、一大地域活性化プロジェクト

【取り組み⑧】2020年8月25日 弊社本社にて、加東市(安田市長)、マルヤナギ小倉屋、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(米田理事長)の三者が一堂に会して、もち麦が健康に与える影響を調査・研究する協定を締結した。もち麦は血糖値の上昇を抑えて生活習慣病予防に役立つといわれる水溶性食物繊維を多く含んでおり、その健康効果を科学的に検証し、地域の健康増進策に活かしている。

○生産者ヘの技術指導等、農業への支援

・加東市でのもち麦栽培では、加東市内に自社実験農場を作り、先端的な栽培技術の試行研究を行い、契約栽培先での減農薬減化学肥料栽培を推進している。

・もち麦栽培を推進するために、通常の原料購入代金以外に別途奨励金等を出して、農家の生産意欲高揚を図っている。

○国産農産物を利用した新商品開発

・北海道産の特栽大豆(すべて契約栽培)を使って日本初で開発した蒸し大豆は、発売以来16年を経過し、競合メーカーも含めて、年間70億円の市場に成長している。

○販売促進

・全国のスーパーマーケット、生協、ドラッグストア等から高級スーパー、百貨店、通販まで、販路別にブランドを変えて、全国で拡販中。

 

(地域農業との連携、地域活動等)

○地域社会との連携

・基幹工場がある加東市を中心とした、地域活性化・食育推進活動に関して

加東市では、連携協定をベースに、小学校から高校さらに商工者まで、一般市民から市議会議員まで、実に幅広いレベルで、地元で栽培されるもち麦をベースにした町づくり、地域活性化の動きを行っている。弊社内に「加東市推進担当者」を設置し、日々加東市役所様、JAみのり様等との連携やり取りを行っているもち麦を通じて「加東市を日本一健康な町にしよう」をスローガンに掲げ、地域に密着した活動を展開している。

<具体的な活動実績>

・加東市内での各種健康セミナーの開催 1年間で22回、989名受講 (2019年度)

・加東市産もち麦を使用した商品開発

・県立社高校との共同開発商品が、2019年度内閣府主催「地方創生☆政策アイデアコンテスト」優秀賞受賞。

・加東市学校給食でもち麦メニューの開始 小中学生向け冊子「もち麦のおはなし」作成・配布及びもち麦健康食育授業を実施。

○地域の農協、漁協、地方食品産業協議会等との協力状況

・加東市では、2019年4月に副市長を会長とする「加東市もち麦活用協議会」がスタートした。生産者代表、JAみのり、兵庫県北播磨県民局・加東農林振興事務所、同じく加西農業改良普及センター、加東市、マルヤナギ小倉屋の参加の下、協議会を定期開催するとともに、部会として栽培部会(栽培技術の向上)、種子部会(種子生産体制の確立、産地品種対策)、特産部会(特産意識の醸成、活用方法の検討)を開催。

○地域の雇用先としての貢献

会社全体では従業員数460名のうち、加東市内の大門工場、社工場、隣接の小野工場での近隣市町村からの雇用数310人となっている。毎年、地元高校から新卒約10名入社。大卒は、全国から毎年7名程度入社。

 

(食品表示法への対応)

・すべて新法に対応しながら適切に対応している。

・蒸し大豆・蒸しもち麦関連の主要商品については、ホームページにて「原料産地検索システム」を設置し、商品の賞味期限を入力すると原産地が表示される仕組みを導入している。

・機能性表示食品も、蒸し豆・蒸しもち麦等で取得している。