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受賞者一覧

令和2年度/第42回受賞者

食品産業部門 <経営革新タイプ①>〔個人〕(2020)
農林水産大臣賞

小森嘉之

所属:丸大食品株式会社(常勤顧問)
所在地:大阪府豊中市
業種:加工食品事業
> 公式ホームページ

【功績申請の概要】

  • 食肉やハム・ソーセージ等の食肉事業に加え、新たな食品分野との相乗効果による経営の安定を図り、M&Aによりグループ会社規模を拡大させ、経営基盤の礎を築き、食肉加工業界の多角化の先駆けとなり、その後の新たな発展モデルとなった。
  • 牛肉の輸入自由化への柔軟な対応、豚肉の国内での生産から販売に至る一貫体制の構築、新製品開発等に積極的に取り組み、会社の安定的な経営基盤を確立した。
  • 衛生管理体制を確立し信頼性の向上に貢献。独自の「環境保護基準」を策定し、省エネルギーの徹底や環境負荷の少ない容器包装への見直し等を積極的に行い業界の見本となった。
  • 食肉製品の品質向上や表示の適正化に関する諸課題への対応、衛生管理や環境問題等に関する講習会の運営等に積極的に取り組み、消費者等に対する食肉加工業界の信頼性の向上に大きく貢献した。

(業界における指導力、人望)

 先見性の高さ、広い視野により多角化、新製品開発及び衛生管理への尽力等、その実績、見識並びに指導力は高く評価されるとともに、性格円満にして温厚篤実、責任感が強く、豊富な経験を活かして食肉加工業界の健全な発展を先導してきており、業界における信望は極めて厚い。

 

(し界の発展への寄与)

○社内の活性化・多角化経営への積極的な取り組み

  人材育成や改善提案制度などに取り組むことで社内の活性化を進展させるとともに、食肉や食肉製品の範疇を超えた食品分野への事業進出を積極的に進めることで経営基盤の礎えを築き、食肉加工業界の多角化の先駆けとなり、その後の新たな発展モデルとなった。

 

○安定的経営基盤の確立への革新的な取り組み

 食肉事業において、牛肉輸入自由化への柔軟な対応、豚の国内での生産から販売に至る一貫体制の構築、食肉加工事業では、現在でも主力製品となっている製品開発に積極的に取り組むなどし、丸大食品グループの売り上げを、平成10年3月期には連結売上で、過去最高の2,525億円と飛躍的に拡大するとともに、現在の丸大食品グループの安定的な経営基盤を確立した。

 

○食品安全・衛生管理の向上及び環境保護への先駆的な取り組み

   総合衛生管理製造過程承認制度にいち早く取り組んだ結果、平成10年には主要生産工場で厚生労働省の承認を受け、信頼性の向上に大きく貢献した。また、独自に策定した環境保護基準に基づき、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001の取得を推進し、省エネルギーに対応した設備、製造技術の見直しや環境負荷の少ない容器包装への変更等の取り組みを行ったことにより、CO2排出量の削減等の環境負荷軽減への成果があった。

 

○アルツハイマー型認知症の改善に関する研究への取り組み

鶏ムネ肉血清中のプラズマローゲンとアルツハイマー型認知症との関係性についての研究を推進し、認知機能の維持に関わる研究の礎を築いた。

 

○ HACCP制度化対応への取り組み

  氏のHACCP制度化に伴う現状の把握及び小規模事業者向けの手引書の作成等、早急に必要な対応をとるようにとの提言を受け、加工協会は業界におけるHACCPの取り組み状況の把握を行うとともに、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模なハム・ソーセージ・ベーコン製造事業者向け)」を作成・配布し、食肉加工業界のHACCPへのスムーズな取り組みに貢献した。

 

(業界の発展への寄与)

〇食肉加工品の安定的な原料の確保、製造体制の維持等に尽力

 平成14年にハム組合の常設委員会である原料対策委員会の委員となり、平成16年から続く原料豚肉の高騰とこれに伴う海外からの割安なソーセージの輸入増が続く中、特にソーセージ原料の豚肉調製品であるシーズンドポークについては、胡椒の含有量及び胡椒に含まれる辛味成分ピペリンの含有量の基準が定められているが、ピペリン含有量は使用する胡椒による個体差が大きく、万が一、ピペリン含有量が基準値を下回ると、豚肉調製品ではなく豚肉の関税区分となってしまうため、ピペリン含有量の基準値を下回らないように必要以上に胡椒を混入しなければならず、原料肉として使用する際に、辛味成分が強すぎて使用しにくいという状況にあったため、加工協会常務理事として理事長をはじめとする役員に働きかけ、平成18年2月、シーズンドポークがソーセージ原料として使用し易くなるよう従来の胡椒の含有量及び胡椒のピペリン含有量の低減について農林水産省を通じ財務省に求めた。

また、平成20年より同委員会の副委員長、平成30年より委員長に就任し、平成21年4月3日付で、「豚肉及び豚肉調製品の輸入関税と輸入急増時の対応等についての要請書」を、平成26年6月13日付で、「原料・製造コスト高による業界の経営における窮状を鑑みた食肉加工業に対する緊急対策の要望書」を、平成27年11月16日付で「TPP交渉大筋合意後の差額関税の撤廃に伴う国内製造体制の維持・強化及び輸出体制の強化等に関する要請書」を提出するなど、食肉加工品の安定的な製造に関する検討・協議・要望を積極的に行った。さらに、同委員会において、原料の安定的確保に資するため、食肉及び食肉加工品の需給動向や各種経済連携交渉等に関する情報の把握や情報交換を積極的に行った。

 

○食品表示関連の法律改正に伴う公正な食品表示の推進への取り組み

   ハム・ソーセージ類公正取引協議会の副会長として、消費者の食品表示に対する信頼性を確保し、公正な食品表示の適正化を図るためには、これらの情報を消費者や学生などに広く啓蒙することが必要であると提言した。これを受け、同協議会は、各種勉強会や講習会を順次開催し、情報提供に努めた。また、平成27年3月に公布された食品表示法に基づく食品表示基準について、ハム・ソーセージ・ベ ーコンに特化した取り纏めた表示基準、さらに消費者等に分かりやすく整理した解説書の必要性を提言し、同協議会は「食肉製品表示ブック」を作成した。

 

○食肉加工品の表示に関する規約の普及、表示の適正化に尽力

平成14年5月にハム・ソーセージ類公正取引協議会の理事に、平成16年5月に常務理事に、平成22年に副理事長に就任し、食肉加工品の公正な表示の規則を定めたハム・ソーセージ類の表示に関する公正競争規約の普及に努めるとともに、定期的な表示の点検・指導等を推進し、表示の適正化に尽力した。

 

(地域・地域経済における活動)

○阪神・淡路大震災救援物資の提供

 平成7年に阪神・淡路大震災が発生した際、神戸市灘区役所への魚肉ソーセージ250ケース、ロースハム250ケース、オールポークハム370ケースの提供及び迅速なる配送を支持し、多くの被災者を支援した。

 

○奨学金給付による学生の支援

  昭和57年4月に設立された公益財団法人小森記念財団の2代目理事長として、丸大食品創設者の故小森敏之の「学業優秀、品行方正にもかかわらず経済的理由により就学が困難な者を支援したい」との遺志を引き継ぎ、毎年、返済義務のない奨学金の給付を行っている。