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受賞者一覧

令和2年度/第42回受賞者

食品産業部門<農商工連携推進タイプ>〔個人〕(2020)
農林水産省食料産業局長賞

霜田 浩

所属: 株式会社鎌倉ハムクラウン商会(代表取締役社長)
所在地:神奈川県横浜市
業種:食肉製品製造業
> 公式ホームページ

【功績申請の概要】

  • 7大アレルゲン(卵、小麦、乳、えび、かに、そば、落花生)を使用しないという「新たな視点に立った無塩せきハム・ソーセージ」を業界に先駆けて開発し、全国の学校給食向けハム・ソーセージの中核的生産企業としての地位を確立した。
  • 国産豚肉のうち、特定の病原菌を持たないSPF豚の原料(ウデ、モモ)を常時一定量確保し、業界に先駆けてその豚肉を無塩せきソーセージの原料に使用している。
  • 国産豚肉の全ロットについて自社で金属探知検査を行い、より安全・安心な国産豚肉を使用したハム・ソーセージとして、学校給食及び生協向けに的を絞った営業戦略を立て経営の安定化を図るとともに、産地仕入先と定期的に情報交換を行い国産豚肉の安定調達に努め、国産豚肉の付加価値向上や産地との協力関係に力を入れるなど、我が国養豚振興に貢献している。

(業界における指導力、人望)

性格円満にして温厚篤実、責任感強く、30年以上食肉加工業に携わり、鋭い見識と旺盛な探究心から、国産豚肉の安定確保・利用拡大及び学校給食への安定的食品提供に注力するとともに、その高潔な人格と豊富な経験を活かして食肉加工業界の健全な発展に尽力し、業界からの信望は極めて厚い。

 (し界の発展への寄与)

○「無塩せきハム・ソーセージ」生産の中核的存在

株式会社鎌倉ハムクラウン商会は昭和37年6月に創業。平成13年11月に同社代表取締役社長に就任すると、「次世代を担う子供たちが安心して食べられる、体にやさしく美味しいハム・ソーセージを作る」という強い信念のもと、平成14年から7大アレルゲン(卵、小麦、乳、えび、かに、そば、落花生)を使用しないという「新たな視点に立った無塩せきハム・ソーセージ」を業界に先駆けて開発し、迅速な意思決定のもと、最新鋭の機械を積極的に導入して生産能力の増強を図るなど、経営資源を集中してきた結果、今日の同社の生産量は氏の社長就任前に比べ2倍以上となり、全国の学校給食向けハム・ソーセージの中核的生産企業としての地位を確立するまでに拡大した。また「無塩せきハム・ソーセージ」のネット販売を可能にするため、平成17年にホームページ&ショッピングサイトを開設、平成23年4月にブログを開設、平成30年8月にはスマホユーザー向けに対応したホームページにリニューアルし「無塩せきハム・ソーセージ」に関する情報を発信するなど、日々ユーザーの利便性向上への対応に努めている。

 

○食品安全マネジメント強化への取組み

 平成23年4月、富山県、福井県及び氏の地元である横浜市の焼肉チェーン店において、腸管出血性大腸菌による食中毒事件が発生し、消費者の食品に対する安全志向はより一層高まった。こうした消費者の安全志向の高まりを受け、より高度な食品安全への対応と継続的な取り組みが企業の持続的な発展に繋がるとの考えのもとで、社内に食品安全チームを立ち上げ食品安全マネジメントの構築を主導した結果、本社工場は2年間の準備期間を経て平成26年1月に国際規格であるISO22000を取得した。また『食品安全を全員で考える』をスローガンに掲げ、製造部門の従業員、製造に直接携わらない営業や管理部門の従業員、パート・アルバイトを含めた全従業員の意識改革の推進、及び部門間の横断的なコミュニケーションの強化に努めるとともに、特定部門の担当者によって認知されたリスクが隠蔽されることのないよう会社全体で関連情報の共有化を図っている。

 

(業界の発展への寄与について)

○我が国養豚振興への貢献

我が国のハム・ソーセージ原料は輸入冷凍豚肉が8割以上を占めているが、氏は、自社のハム・ソーセージ原料には、北海道や九州等の産地から仕入れた国産豚肉を積極的に使うよう指示し、「いつ」「どこで」「だれが」「どのように」育てたか、トレーサビリティー(生産履歴)を把握できるものとして、と畜後3日以内に届けられた冷蔵豚肉のみに限定している。また、国産豚肉のうち、特定の病原菌を持たないSPF豚(特定病原菌不在豚:Specific Pathogen Free)の原料(ウデ、モモ)を常時一定量確保し、業界に先駆けてその豚肉を無塩せきソーセージの原料に使用している。さらに、国産豚肉の全ロットについて自社で金属探知検査を行い、より安全・安心な国産豚肉を使用したハム・ソーセージとして、価格競争が起きにくい学校給食及び生協向けに的を絞った営業戦略を立て経営の安定化を図るとともに、産地仕入先と定期的に情報交換を行い国産豚肉の安定調達に努めている。このように氏は、国産豚肉の付加価値向上や産地との協力関係に力を入れるなど、我が国養豚振興に大いに貢献している。

○組合運営の健全化及び食品表示の適正化への取組み

日本ハム・ソーセージ工業協同組合(以下、「ハム組合」という。)は、収益事業の柱として、平成元年10月より「食肉加工施設等整備リース事業」を実施している。氏は、平成28年6月にハム組合関東支部の理事に就任すると、ハム組合本部の財政基盤の健全化のため、関東支部組合員にリース事業の積極的な利用を働きかけるとともに、氏が経営する㈱鎌倉ハムクラウン商会においても積極的な利用を図った結果、同社の令和元年度末のリース利用実績額は、利用額上位50社のうち上から3番目に大きく、ハム組合の財政基盤の安定化に大きく寄与している。こうした氏の経営手腕並びに指導力が高く評価され、氏は平成30年5月にハム組合監事に、また令和2年5月にはハム組合理事に就任し現在に至っている。 また、令和2年5月にハム・ソーセージ類公正取引協議会の理事に就任し、「無塩せきハム・ソーセージ」等の表示について、業者間の公正な競争に資するため、公正競争規約の周知徹底と適正表示の推進に取り組んでいる。

○関東支部役員としての活動

社業の発展と地域社会への貢献が高く評価され、ハム組合で最も規模の大きい関東支部の組合員から強い要請を受けて、平成20年6月に同支部監事に、平成28年6月に同支部理事に、平成31年4月から同支部副支部長に就任している。監事就任後、即座に持ち前の実行力を発揮し、食品安全管理の向上を図るため、平成20年から安全対策部会の委員に就任し、関係省庁から担当者を招聘して食品安全に関する講習会を開催するなど、食品安全の普及啓発に尽力している。

〇企業年金基金制度の運営に尽くした功績

昭和48年8月、食肉加工業界で働く加入者に対して、上乗せ年金給付と福利厚生事業を行うことを目的に設立された日本ハム・ソーセージ工業厚生年金基金(以下、「厚生年金基金」という。)は、平成20年のリーマンショック等の影響により財政が次第に悪化した。平成25年6月、「厚生年金制度の見直しに関する改正法」が成立し、財政基盤の弱い厚生年金基金の段階的な解散が促進されると、厚生年金基金も発展的に解散することとなり、平成28年8月に新たな年金制度を運用する「日本ハム・ソーセージ工業企業年金基金」(以下、「企業年金基金」という。)が設立された。

平成28年10月、氏は企業年金基金の代議員に就任すると、厚生年金基金の清算事務局が進めていた最低責任準備金や残余財産の確定作業等について、問題解決や将来予測の見通しなどの提言を積極的に行い、その結果、厚生年金基金は加入者に追加的な負担を強いることなく、平成31年2月に清算結了することができた。

こうした氏の見識は、他の代議員からも高く評価されており、令和元年8月には企業年金基金の理事に就任し、加入者の年金基金制度に対する信頼醸成に取り組んでいる。

 

(地域・地域経済における活動)

○地域活性化への取組み

地元の消費者にハム・ソーセージの品質、価値を知ってもらうこと、また、消費者との直接対話を通じて多様なニーズを製造現場に反映させることを目的として、平成5年より隔週土曜日の朝と年末に「工場直売市」を開催し、毎回500名以上の消費者を集めている。働き手が増えることで、人と人との交流が盛んになり地域が活性化するとの認識のもと、社員採用においては、新卒は県内の大学や高校の全学部全学科を対象とし、全ての職務において募集を行うとともに、中途社員やパートについても積極的に地元採用を行うなど、地域の雇用機会の拡充に大きく貢献している。なお、従業員の雇用規模は、氏が社長に就任した当時の90名から、現在は142名まで拡大している。

〇地域の食育普及推進活動への取組み

平成24年6月に内閣府と地元横浜市が、食育について国民への直接的な理解促進を図るために開催した「第7回食育推進全国大会(食育&復興支援フェスティバル横浜)」への出展を主導し、食の楽しさ・喜びを体感することをコンセプトに、自社のハム・ソーセージ製造を撮影したビデオの上映、ハム・ソーセージの試食販売、パネル展示及びパンフレット配布等を行った。また、「子供たちの観察力を養うためには実験などの体験的学習が何より大切である」という強い思いから、平成27年7月に「生活協同組合ナチュラルコープ・ヨコハマ」の商品委員会が開催した親子企画に、ウインナーソーセージを使った実験を提案するとともに、現場に社員を派遣し、食品添加物について子供たちに分かりやすく教えるなど、地元生協の食育推進活動に尽力している。

〇地域の食中毒予防啓発活動への取組み

平成13年10月から一般社団法人横浜市食品衛生協会・磯子区食品衛生協会の監事に就任している。氏は、地元の磯子まつり振興委員会が主催する「磯子まつり」(来場者約3.5万人)に協賛・協力するとともに、磯子区食品衛生協会の出展を働きかけ食中毒予防啓発の取組みを主導した。同協会が主催する「磯子区食中毒予防講座」の開催について、手洗い実習やノロウイルス対策の実演といった実行性のある食中毒予防講座も組み込むよう提言するなど、地域住民に対する食中毒予防啓発活動に取り組んでいる。