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受賞者一覧

令和元年度/第41回受賞者

食品産業部門 <経営革新タイプ①>(2019)
農林水産省食料産業局長賞

株式会社 リオ

代表取締役: 市川 正秀
所在地:千葉県木更津市
業種:燻製調味料の製造、加工
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【功績申請の概要】

  • (食品の製造・加工に関する新技術の開発)
    2011 年「液体を燻煙する方法およびその装置」として特許を取得。無添加でありながら今までにない香りの調味料の製造販売を実現した。
  • 燻製加工の有無だけでなく、ガスクロマトグラフィーを用いて高度分析し、燻香を視覚化。香りの強弱を数値管理し、製品の力価を詳細にコントロールすることで、非加熱食品や液状の食品にも燻製風味を付与できるので今までにない新しい料理を創造できる。
  • 大手メーカーへの原料提供や技術提供など、あらゆる食品の風味向上へ寄与できる。
  • 飲食業界トップランナーへの新しい「香り」の調味料提供となっている。
  • 香りによって塩味やコクを強く感じるため、減塩の可能性が期待できるほか、ヴィーガン、ベジタリアンなどへの味の多様化に貢献できる。
  • 本技術による新たな地域産品開発は、廃材をスモークチップとして用いることもできるため、SDGsを見据えた新たな取り組みともなり得る。

●功績申請の具体的内容
(開発した技術の高度性)
〇液体燻製技術とガスクロマトグラフによる燻香の視覚化
2011 年「液体を燻煙する方法およびその装置」として特許4783463 号を取得、液体である食用油脂や醤油などの調味料を燻製することで、食材にかけるだけで燻製風味が味わえる、香りの調味料を製造販売している。香料やくん液などを使用することなく、特許製法により無添加で製造される弊社の燻製調味料は、単に燻製加工の有無だけではなく、その香りの強弱を数値管理することで安定した製品を提供している。
〇香気強化と燻香のコントロール
現在、自社の更なる技術向上により、燻製の力価を高める技術(以下、香気強化技術とする)が構築されている。この技術により作業性が格段にアップし生産性の向上、原料在庫の軽減、相手先へ納入する際の輸送コストの軽減、加工温度の軽減など、数多くのメリットがある。
(開発した製品の独創性)
〇特許取得の独創的な燻製技術
燻製といえば肉や魚などを煙で燻すというものが一般的で、液体である醤油やオリーブオイルなどは燻製された事はなかった。弊社の技術は木材チップから得る燻煙を非常に微小なバブル化にし、醤油やオリーブ油に直接浸透させる。減圧したタンク内の液体中に燻煙を送り込むところに新規性と独創性が認められ、特許を取得している。
液体を燻製することでどんな食材でも「かけるだけ」「混ぜるだけ」で一瞬で燻製風味に変化するため、すばやく風味が変化する様を楽しんだり、青果や鮮魚など加熱できない食材にも燻製風味を付加することが出来るほか、スープやシチューなどの液状のお料理も燻製風味にすることが出来るので今までにない全く新しい料理を創造できる。また、スモークチップを変えることで様々な燻製風味を表現できるので商品の差別化が容易である。

〇嗅覚受容体から風味をアプローチする
哺乳類が香りを嗅ぐときの嗅覚経路をオルソネイザル経路、更に人類のみが持つ嗅覚経路で食物を摂取したときの「ごっくん」という呼吸をはじめとした喉からこみあげてくる香りの経路をレトロネイザル経路と呼び、このレトロネイザル経路からの香気成分を嗅覚受容体が受信したとき、私たちはこれを「香り」とは認識できず「味」と認識している。当社の燻製調味料はこのレトロネイザル経路嗅覚に訴えかける、非常に独創的なアプローチの調味料である。当社独自の技術である効率よい液体燻製、また燻製
の力価コントロールや、香気成分の数値化・視覚化によって、化学調味料などの添加物に頼らず「香り」というアプローチで美味しさを引き出していく手法は、他のどの調味料にもない最も独創的な側面である。
(技術・新製品の普及度)
〇販売実績
2012 年3 月から本格的に販売開始、現在までの売り上げは小規模且つ緩やかではあるが伸び続けている。昨今では燻製による風味向上の効果が見直されてきており、燻製商品の市場は拡大傾向であることから需要拡大が期待できる条件が整ってきた。

また、2016 年10 月に発売した燻製マヨネーズタイプ「燻マヨ」は、リピート生産は続いている。さらに加工技術としても多くのPB依頼を受け、チョコレート原料油脂の燻製加工の提案がされるなどスイーツの業界にも大きな変化を呼ぶ技術となっている。
〇国内しょうゆ製造業界への寄与
小規模の国内醤油製造業界では「高付加価値、高単価の商品ができる」ということから軒並み燻製しょうゆを製造販売するようになり、低迷気味であった醤油業界にとっての救世主的技術であると評価されている。燻製しょうゆが増えたことで市場規模は拡大、そのすべてが当社技術を使用しているわけではないが、燻製調味料の認知度は確実に高くなってきている。
〇飲食業界トップランナーへの新しい「香り」の調味料
2018 年に発売した燻製オイル「N5S」は本香気強化技術の表れで、他には決して真似出来ない商品であり、ミシュランガイド星獲得をした有名レストラン、有名ホテルの他、大手航空会社様の国際線機内食など非常に高いレベルの料理にご採用されている。
〇オーガニック業界への寄与 オーガニック食の味の多様化
2017 年4 月弊社は燻製業界で初めて有機JAS認証を受け、昨今見直されている有機食品のカテゴリにも取り組みをはじめた。第一弾として創業より続けている燻製しょうゆを有機商品化し、単調な味付けであった有機食品業界に非常に独創的な風味を提案することができた。現在の最新商品である「有機燻製ピクルスの素」ももちろん原材料全てが有機JAS。味付けなどの出口戦略に足踏み状態であった国内オーガニックマーケットに一石を投じる調味料として各界からの大きな期待も寄せられている。
(開発成果の社会への貢献)
これまで固体だけであった燻製技術は、畜産物もしくは海産物に使用されるだけの技術であったが、液体を燻製することで非常に高い付加価値が生まれ、活用の幅は飛躍的に伸び、調味料を活かした地域産品の味づくりなどその可能性を大きく広げつつある。
地域の林業における枝打ち材や木工伝統工芸品の木屑、地域の酒蔵に眠る酒蔵を廃棄物とせずにスモークチップとして利用することで、廃棄物の発生防止や削減に繋がるうえ、元来廃棄物であったものにインセンティブを与えることができる。したがって本技術による新たな地域産品開発は、SDGsを見据えた食品産業における新たな取り組みともなり得る。