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受賞者一覧

平成30年度/第40回受賞者

食品産業部門 <農商工連携推進タイプ>(2018)
農林水産省食料産業局長賞

大海酒造株式会社

代表取締役:河野 直正
所在地:鹿児島県 鹿屋市
業種:焼酎製造
> 公式ホームページ

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【功績申請の概要】

  • 「美味しい焼酎は原料から」をコンセプトとし、主原料となるサツマイモの生産において、地元の契約農家と共に品質の維持や向上に努め、大隅半島を代表する酒造メーカーとして薩摩焼酎発展の一翼を担ってきた。
  • 焼酎の製造においては、主原料となるサツマイモの「黄金千貫」をはじめとして、鹿児島県の奨励品種に指定されている「紅乙女」や焼酎専用に開発された「ジョイホワイト」を使用し、品種に応じた焼酎造りに取り組むことで、自社の多様な商品開発に活用するだけではなく、契約農家の安定的な生産を後押ししている。
  • 契約農家と製造業の距離を積極的に縮める努力を通じて、大隅半島におけるサツマイモ生産の振興及び地域活性化に寄与するとともに、地理的表示保護対象に認定されている「薩摩焼酎」の伝統や文化を守っている。
  • その他、地域イベント等への積極的な協力、中学校での出前授業実施や工場見学の受け入れ、地元雇用の推進など地域社会にも大きく貢献している。

(農商工連携の推進)

○国産農産物の利用状況

主原料の芋については、100%県産を使用し、15軒の契約農家より仕入れている。また、米は100%国産米を使用している。直近3年の原料の利用量は、下表のとおりである。

 

【原材料使用量の推移】

原材料名

平成27年度

平成28年度

平成29年度

芋(県産)

1,400t

1,200t

1,600t

全体量に対する割合

83.3%

83.2%

71.4%

米(国産)

 

280t

(うち県産60t)

240t

(うち県産60t)

320t

(うち県産112t)

全体量に対する割合

3.6%

16.6%

14.3%

麦(オーストラリア産)

0t

241.5t

322t

全体量に対する割合

0%

16.7%

14.3%

薔薇(県産)

60㎏

60kg

60kg

 全体量に対する割合

0.00004%

0.00004%

0.00003%

1,680t

1,441.5t

2,242t

 

○生産者ヘの技術指導等、農業への支援

当社の製造管理責任者である杜氏がさつま芋の契約農家に対し、栽培時期、栽培方法、栽培品種の育成、収穫時期と多岐に渡る指導を行っている。焼酎の製造において、原料となる芋の品質が焼酎の品質に大きな影響を与えるため、一体となって取り組んでおり、ひいては生産者の生産技術等の向上につながり、地域農業の振興発展に貢献している。

○国産農産物を利用した新商品開発

・原料に使用する芋や米の品種、麹の種類に応じた商品を開発することで、バラエティ豊かな商品ラインナップを可能にしている。

・芋や米の品種の特長を生かし、掛け合わせたりすることで、風味や口当たりがそれぞれ違う商品の差別化を図り、一般販売8銘柄、特約店向け11銘柄を展開している。

 

・さらに鹿屋市の特産品「ばら」を使用した商品や、映画「永遠のゼロ」とタイアップした商品(期間限定)を開発、製造、販売している。

「ばら焼酎 薔薇の贈りもの」は、かのやばら園で栽培されたダマスク系「ロサ・ダマッセナ」(バラの中でも特に香りが強く最高級の香水の原料となる)を使用し、香りが際立ちすっきりとした味わいになるように仕上げ、女性焼酎愛好家を中心に好評を得ている。通常の本格焼酎の製造法と異なる点は、さつまいもと同時にばらの花を仕込む点である。この取り組みは「『ばら焼酎』の開発、製造及び『かのや ばら園』を 活用した需要開拓による地域振興」のテーマで経済産業省地域資源認定を受けている。

「永遠のゼロ」は、大隅地方(海上自衛隊鹿屋航空基地)が2013年公開の映画「永遠のゼロ」の舞台のひとつであったことから、同名の商品を期間限定で製造販売した。大隅産の芋「紅あずま」、肝付産の米「イクヒカリ」を原料に使用し、あえてろ過しない製法で、昔ながらの焼酎の味を再現した。

・製造にあたっては可能な限り手作りにこだわるとともに、現場従業員が技術向上に努めており、質の高い商品の提供を実現している。

○販売促進

・主力商品である、「さつま大海」や「一番雫」などは、卸業者を通じて幅広い販売を展開している一方、「海」や「くじら」などの商品は、グループ会社である大海酒販株式会社のオリジナルブランドとして、特約小売店を通じた限定的な販売を行っている。

・商品の特性に合わせ販売チャネルを使い分けることで、流通面での差別化及び販売促進を図り、北海道から沖縄まで全国38都道府県において販売されている。

 

(地域農林水産業との連携、地域活動等)

○地域社会との連携

・契約農家とは、芋の栽培や生産に関する指導支援を通じて、非常に密接な関係を構築している。

・隣接する垂水市で温泉水の販売を行う、株式会社垂水温泉鶴田と連携し、「前割り」と呼ばれる水割り焼酎の新たなカテゴリーの訴求及び開発に取り組んでいる。焼酎と温泉水という異なる商材を持ち寄って、商品開発や販売を手掛けることで地域産業の活性化に繋げている。

・地元鹿屋市の他、隣接する垂水市及び肝付町のふるさと納税返礼品へ提供し、地域振興に寄与している。

・地域の中学校からの要請による「出前授業」の実施や、工場見学受入を行い、当社の取り組みを紹介することで地場産業への理解及び関心を促すと共に、人材の地元定着に向けた地域貢献を果たしている。

・地域の夏祭りやイベント時に、可能な限りブース出展や協賛広告等での協力を行うほか、県外でのイベントにも積極的に参加しており、今年度は明治維新150年を記念し東京で開催されたイベント「薩長土肥の食と地酒in江戸会議」、「焼酎の会@しながわ水族館」への出展し、焼酎や鹿児島の食文化の魅力発信に努めている。

○地域の農協、漁協、地方食品産業協議会等との協力状況貢献

・「JA鹿児島きもつき」と協力体制を築いており、JAのPB商品「きもつき浪漫」をOEM供給している。 

・鹿児島の食品産業の振興・発展を目的としている鹿児島県食品産業協議会に加盟し、食品製造業者や他の焼酎製造業者と共に焼酎文化の発展の一翼を担っている。

・県内の旧協業組合6社で連絡協議会を組織しており、定期的に勉強会を開催するなど相互に研鑽を図っている。

○地域の雇用先としての貢献

・従業員は、全て地元より採用しており、地域の雇用創出に積極的に取り組んでいる。正社員28名が従事している(パート・アルバイトは繁忙期のみ)が、全員が県内出身者で75%にあたる21名が鹿屋市出身者、その他も近隣市町出身者の雇用であり、地域の雇用を支える役割は大きい。

・直接従事者のみならず原料の栽培・生産に関わる人材や環境の整備、各種事業等の協力を通じて、地域貢献に積極的に取り組んでいる。