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受賞者一覧

平成30年度/第40回受賞者

食品産業部門<経営革新タイプ③>(2018)
農林水産大臣賞

東洋ナッツ食品株式会社

代表取締役社長:中島 洋人
所在地:兵庫県 神戸市
業種:ナッツ・ドライフルーツの加工・販売
> 公式ホームページ

【功績申請の概要】

  • 【栄養・健康に配慮した食品の開発】
    昭和34年に日本初のナッツ専業メーカーとして設立し、平成5年には創業者中島泰介氏が『日本ナッツ協会』を設立するなど、常に業界の中心的役割を果たし、日本のナッツ市場の発展に大きく寄与してきた。瀬戸内海産の小魚を味付けした『味付けかえり』を使用した『さかなっつハイ!』を開発し、ロングセラー商品に育てることにより、瀬戸内海の水産加工業の振興にも大きく寄与している。
  • 独自の焙煎技術を駆使し、ナッツそのもののおいしさを引き出した『食塩無添加シリーズ』を開発し、ナッツを『健康志向』に焦点を当てた新たなマーケットの形成に主導的役割を果たした。
  • 落花生やナッツ類に付着するカビ毒『アフラトキシン』の簡易検査に関する研究を発表し、食品衛生学会で高く評価されるとともに、アフラトキシン汚染粒除去対応と検査研修を幅広く実施している。
  • GABAを多く含む『発芽アーモンド』の開発に成功し、商品化にこぎつけるなど、大学とともにナッツの可能性を引き出す新たな取り組みにも積極的に取り組んでいる。
  • 消費者のナッツに対する理解を深めてもらうために始めた「アーモンドフェスティバル」は、地域に根ざしたイベントに成長した他、ナッツを通じたさまざまな社会貢献活動にも取り組んでいる。

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(開発・製造した製品の独創性・高度性と製造方法の改良・高度化)

〇『さかなっつハイ!』は昭和60年の発売以来30年を超えるロングセラーであり、ナッツと瀬戸内海産の小魚を絶妙な配合でミックスした小袋製品である。競合する類似商品も多数商品化されたが、コンビニやドラッグストア、ネット通販等、量販店以外への消費者接点の広がりもあり再ブレイク。ここ10年ほど製造量も倍増している。

〇平成15年秋に本格投入した「無塩アーモンド」「無塩カシューナッツ」の2品は、お酒のおつまみと認識されていたナッツ市場に、「健康と美容のためにナッツを食べる」という新たな市場を創り出した。

〇小魚のカルシウムの吸収をたすけるビタミンDを添加や必須脂肪酸のひとつであるカエリのDHAを強化、脱脂ピーナッツの配合など、差別化を目的としたリニューアルを重ねてきた。計量包装面でも、比重の異なる3つの原料を個別に計量し、配合ムラが少なくなるようコンピュータースケールの個別計量器の開発に取り組んだ結果、小袋での個別計量・不活性ガス充填機は日本初号機となり、その後全国の食品メーカーに普及していった。平成23年、超高温(300~400℃超)に熱した蒸気を“熱風”としてナッツにぶつける焙煎方法を独自に開発した。これは業界のドライロースト法の主流である熱風ロースト法に比べ、食感・風味とも格段に優れた製法である。

 

(研究開発体制)

〇ナッツ専業メーカーのパイオニアとして、ナッツの持つ無限の可能性を引き出し、世の中に広げていくために、現在では製品開発を社長直轄のフロンティア開発室で行っている。フロンティア開発室は製品設計・製品開発分野を担うだけでなく、基礎研究・製法開発を行う研究所を有し、マーケティングやブランディングを行うマーケティング分野、顧客のニーズや声の収集・テストマーケティングを行うB to C分野などで構成されている。

 

(販売方式や販売ルートの工夫)

〇『さかなっつハイ!』の販売以前は、食系問屋を通じた食料品店や百貨店等での販売が中心であったが、菓子問屋を起用し全国の地域生協や量販店へアプローチした。量販店では「全入店者に『さかなっつハイ!』を配布する」無償サンプリングを大々的に実施し、今では菓子売場の大きな柱となっている「カレンダー(連もの)」タイプ(パンフレットの左端)を案内し、ナッツ売場以外での展開を図った。

量販店では、ナッツ製品は塩味付きがひと品あれば十分という認識だったが、マスコミへの働きかけとともに、ナッツに理解の深い成城石井・紀伊国屋、百貨店での展開を実施した。また商談では無塩ナッツが売れる実績を示しに、量販店のナッツ売場に塩味付きナッツと同時に食塩無添加ナッツを並べることの必要性を訴えてきた。

 

(市場開発・普及度)

〇『さかなっつハイ!』はカルシウム摂取量不足という社会的課題に対する「おいしいカルシウム」という訴求や、製品コンセプトが明確であったこと、『さかなっつハイ!』というネーミングが奏功して大ブレイクした後も、販売量を拡大してきている。

〇ナッツの健康への効用を訴求し、業界に先駆けて『食塩無添加シリーズ』を展開。その後他社も追随し、市場規模は180%に拡大した。まさに「おつまみとしてのナッツ市場」に、「健康・美容のためのナッツ市場」が上乗せされた形となった。

 

(外部との連携)

〇研究開発を続けてきたアフラトキシンの簡易検査法は、平成元年には、JICA兵庫国際センターがJICA技術協力プロジェクトの受入機関となった際に「マイコトキシン検査技術研修コース」として組み込まれ、以後、平成25年までの20年以上にわたり、28カ国から129名の研修員が参加し、技術の習得等により、帰国後のマイコトキシン対策への一助となった。

〇GABA研究の権威である龍谷大学・植野洋志教授との共同研究により、日本で初めて、独自技術によって生のアーモンドの10倍のGABAを引き出した発芽アーモンドの開発に成功した。

 

(社会への貢献)

〇ナッツに対する理解を深めてもらおうと、昭和61年以来、敷地内で育てているアーモンドの花を見てもらう『アーモンドフェスティバル』を開催し、最近では2日間で3万人ほどの来場者となっている

〇地域緑化への貢献として「アーモンドの苗木」を公の施設に配布している。

〇食育への取組みとしては、

・日本ナッツ協会のナッツの啓蒙リーフレットを神戸市や大阪府、堺市、京都市等の消費者センターの啓蒙パンフレット常設コーナーに積極的に継続的な配架を実施している。

・子供向けのナッツの食育講座や、保護者向けのスポーツとナッツの関係を啓蒙する講義・調理実習などを実施している。

〇兵庫県初のプロバスケットボールチーム(兵庫ストークス)の最も大事な立ち上げ時にメインスポンサーとして下支えしたほか、兵庫ストークスの公式戦開催時には、地域の小中学校のバスケット部を招待し「さかなっつ杯(カップ)」戦を開催していた。

 

(食品表示法への対応)

〇消費者に正しい情報を伝えるために原料・副原料・調味料等の規格情報のデータベース『ベスティアネオ』を導入、迅速に正しい表示が行われる体制を構築している。

〇社員の食品表示への意識を高めるため、「食品表示診断士」資格の獲得を積極的に勧奨しており、正社員数が100余名の中、品質管理部門・製造部門を中心に、現在10名(上級1名、中級9名)の資格保有者が在籍している。