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受賞者一覧

平成30年度/第40回受賞者

食品産業部門<経営革新タイプ②>(2018)
農林水産大臣賞

仙味エキス株式会社

代表取締役社長:筬島 克裕
所在地:愛媛県 大洲市
業種:調味料及び特定保健用食品の製造・販売
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【功績申請の概要】

  • 【新技術・新製品の開発】
    昭和51年の創業以来、製品開発において、「安全性のさらなる向上」、「ペプチドの機能的可能性の追求」、「美味しさと味わいのある食品素材の開発」を三原則とし、健康と豊かな食生活への貢献を目指して調味料及び特定保健用食品(トクホ)にも使用できる機能性食品素材の製造、販売を行っている。
  • 創業当初は主に魚肉から調味料を製造していたが、平成元年に農水省の「機能性成分の工業的分離精製技術を研究するプロジェクト」に参画したことを契機に、かねてから九州大学と共同研究していた「機能性ペプチド」の工業化を目指して検討を重ね、平成11年粉末形状のサーデンペプチド(新規ペプチドSY)の商品化に到った。その後改良とトクホ表示許可取得を重ね、現在のサーデンペプチド(新規ペプチドSY)を含む機能性食品素材の全商品売上に占める割合は10%程度であるが、利益率が高く収益の柱の一つとなっている。
  • 同社は、単なる食品メーカー向け食品素材(調味料)の製造販売企業から、研究開発力と品質管理力の高い企業と認知されるようになった。

(開発した技術の高度性)

〇特定保健用食品(トクホ)の機能性の実証

・九州大学との共同研究によりトクホとしての有効性確認の為の「ACE阻害活性測定方法」を確立し、学会発表後、トクホの標準的な分析方法の一つになっている。

・安全性と摂取目安量の確認には、九州大学の医学部および農学部に指導を仰ぎ、何度も議論と予備試験を重ねることで、独自の一日摂取目安量を設定し、ヒト臨床試験を実施するに到った。

・「ACE阻害」による血圧降下の作用機序を解明するにあたっては、九州大学との共同研究によって、サーデンペプチド(新規ペプチドSY)の機能性の指標成分として選んだ低分子ペプチドのバリルチロシンの定量方法が確立でき、メカニズムについてもバリルチロシンが生体内で血圧をコントロールするペプチドホルモンを構成する一部分であることと薬と同じ作用メカニズムを持つことを確認し、安全性とともに生体内からの有効性も解明できた。これらのヒト臨床試験を含む実証データは他社によるトクホの表示許可申請の際にも繰り返し論文化され、独自技術として確立された。

〇有効性と味のバランスが取れた機能性食品素材の開発

九州大学と独自に有効性を損なわず、かつ苦味がなく呈味性に優れた「機能性ペプチド」の開発に取り組み、有効性の高い低分子ペプチドでイワシの肉質から多く生成されるバリルチロシンというジペプチドを含む多数のペプチドからなるサーデンペプチド(新規ペプチドSY)を抽出することに成功した。このサーデンペプチド(新規ペプチドSY)は、摂取後消化酵素によって分解されることなく機能を有したまま生体内に吸収されて効果を発揮するために必要な摂取量が少なくて済むうえ、機能性の指標成分であるバリルチロシンは血圧制御システムに関与する血圧調節物質であるアンジオテンシンⅠを構成する一部分でもあるので、非常に安全性の高い製品となった。

〇量産技術とコスト低減の確立

平成元年に農水省の「機能性成分の工業的分離精製技術を研究するプロジェクト」に参加しこの中で蓄積した技術を活用してり吸着樹脂を用いた分画精製技術を確立するも、この段階では使用樹脂がクロマト分析用の高価な樹脂であり、大量生産するにはコストに問題が残った。その後、大学関係や取引先との情報交換、水処理メーカーとの共同研究を進め、効率よく有効成分を分画精製しコスト的にも製造可能な量産技術を確立でき、特許出願すると共にオリジナルカラム分画装置を設計することで実生産を可能とした。

〇特定保健用食品(トクホ)制度及び機能性表示食品制度への対応

安全性が確認できた製品を配合した清涼飲料、野菜果実飲料、錠菓、茶系飲料について、ヒト臨床試験を実施して有効性を確認し、トクホの表示許可を取得した。その実績をふまえて、新たに始まった機能性表示食品制度においても機能性関与成分として使用可能な製品として多くの企業に採用されている。

 

(開発した製品の独創性)

〇有効性だけではなく食品としての味の重視

従来の機能性(ACE阻害活性)の強いペプチドは、分子量が大きくて疎水性の強いものが多く、苦くて刺激が強いので食品素材としては適さなかった。サーデンペプチド(新規ペプチドSY)は、、ACE阻害活性が高く、疎水性が弱いために苦味が少なく、呈味性の優れた低分子量ペプチドを世界で初めて量産化を可能にしたものである。その工業的生産方法は独自技術であり特許を取得している。

〇サーデンペプチド(新規ペプチドSY)の指標成分にバリルチロシンを選択

分子量の小さいペプチドは機能性を持たないとされてきた中で低分子ペプチドであるバリルチロシンにACE阻害活性があることを見出し指標成分にし、それがイワシに多く含まれることを見出し工業的に抽出することに世界で初めて成功した。

〇海外への事業展開

サーデンペプチド(新規ペプチドSY)は、欧米をはじめとする国際特許を取得し、また、安全性の面でも天然水産原料では取得が難しいとされる米国FDAのGRAS認証を平成22年に、欧州のNOVEL FOODの承認を平成23年に受けており、知的財産と安全性のグローバルスタンダードを兼ね備えた食品素材であることから、海外での新規開拓も期待できる。

 

(開発した技術・新製品の普及度)

自社で最終製品を製造せず、トクホの食品素材として原料供給することにより、茶飲料や粉末清涼飲料などの様々な製品が開発でき、製品を配合した清涼飲料水、茶系飲料、粉末清涼飲料、錠菓等の形態で特定保健用食品の表示許可を得ている企業は平成13年以降大手食品メーカーや製薬メーカーなど12社50品目、また、サプリメント形状の形態で機能性表示食品の届出を完了している企業も5社5品目ある。

 

(開発成果の社会への貢献)

〇未利用資源の活用

かつて水揚げされても大量に廃棄されるといった状況にあったイワシから、機能性素材であるサーデンペプチド(新規ペプチドSY)を生産販売することで、水産資源の有効活用を実現している。

〇健康維持への寄与

サーデンペプチド(新規ペプチドSY)は、特定保健用食品として許可を受けているため、科学的根拠に基づいた信頼できる有効性が実証されており、血圧が高めの方の健康維持・増進に寄与している。サーデンペプチド(新規ペプチドSY)は薬ではなく、日常の食品から生活習慣病予防に有効な成分を摂取できるので、健康維持のための予防的効果(血圧降下作用、血糖値抑制作用)も期待でききる。